遠位橈骨動脈アプローチ
Distal radial arteryと呼ばれる遠位橈骨動脈を穿刺してIVRを行う報告が増えてきています。2014年に報告されてからまだ10年経過していないアプローチですがいくつかの利点があり、積極的に用いています。
利点に関しては
- 患者の手の姿勢が自然
- 左穿刺は大腿部に持ってこれて近い位置から穿刺可能
- 止血が楽
- 術後止血のため手首の固定が不要
- 手掌側動脈は温存されるためアレン試験不要
などがあります。詳しくは下記の成書や参考文献を参照して下さい。
どこにある?
遠位橈骨動脈はいわゆる解剖学的嗅ぎタバコ入れに走行しているといわれます。穿刺位置はいくつかバリエーションがありますが、まず難しいことを考える前に患者で拍動が良好に触知できるかが重要だとおもいます。
まだ慣れていない初学者は自分の遠位橈骨動脈を徹底的に触れて走行位置、深さ、下の骨などを把握しておくと良いです。私もこのアプローチをしようと思ってから穿刺するまで毎日のように触ってました。この時ポイントになるのは親指の位置によって皮膚の表面と血管に対する角度が変わる点です。触知の感触も変わるので親指をどの位置にすれば血管が浅く、長く触知するか探ってみましょう。
実際の刺入部は
解剖学的嗅ぎタバコ入れも近位部側に行き過ぎると深さができてしまうので個人的には長母指伸筋腱に近いところが好みです、が解剖学的には神経が近いので要注意です
少し親指を曲げて皮膚を伸展させて長母指伸筋腱の少し母指側から刺入し、針は45度程度立てて先端は体側の方へ向かうように意識しています。
スパズムを起こすと入りにくくなるためエムラクリームなど浸潤麻酔を事前に行ったり、30G針でキシロカインを皮下注するなど工夫も大事です。
一般的には1cc-2cc程度で局所麻酔は十分です。
解剖学的嗅ぎタバコ入れより長母指伸筋腱を超えて更にdistal側で刺すアプローチもあります。
サーフローの場合
本当は穿刺針内筒からワイヤーが出せるタイプが成功率は高くなると思います。
普通のシースについているサーフロー針の場合、内筒から逆血しても更にしっかり全体を進める必要があります。
失敗するパターンは大体浅すぎて外筒はまだ血管内腔に到達していないケースとなります。
外筒から逆血が勢いよく吹き出ていない場合は大体失敗しています。
ワイヤー挿入からシース挿入まで
ワイヤーをそっと挿入し透視で走行を確認しましょう。
特に抵抗なく真っ直ぐ進む場合は通常の手順と同様にシースを挿入しましょう。その際も疼痛を確認し、手首近くで疼痛がある場合は局所麻酔を追加しましょう。
まとめ
遠位橈骨動脈はやや挿入にコツが要りますし、拍動が弱い人は当たらないしスパズムを起こして通常の撓骨動脈アプローチすら困難になってしまうリスクはあります。
しかし止血などは楽なので通常の撓骨動脈に飽きたらチャレンジしてみると良いでしょう。
局所麻酔はしっかり
触知するかが大事
意外と針を立てた方が当たる
日本人によるYoutubeで解説
英語だが詳細な解説あり
なんと遠位橈骨動脈に絞ったガイドブックまでありました。
コメント
[…] 以前の記事で遠位撓骨動脈アプローチについて解説しました。既にYouTubeに遠位撓骨動脈穿刺の動画は複数アップロードされていますが、こういう手技は具体的な例で成功イメージつかめばつかむほど成功しやすくなると思いますので一助になれるように公開しました。 […]