バイパス時の縫合糸の扱い方~持針器編~

STA-MCAバイパスなどで使用される糸は細く、10-0 ナイロンや11-0 ナイロンが使われることが多い。
初学者は針糸の扱いに戸惑うことで時間をロスすることが多く、実際の吻合作業より時間が取られることも多い。
今回は持針器の使用にスポットを当ててみます

マイクロ用の持針器

持針器の場合この画像のようなストレート(先端は直だったり湾曲だったり)の持針器。
この例は村中医療器の「プラム マイクロ持針器」(48000円也)ですが比較的浅い術野で用いるもの。

更に深部用の持針器はこのようなデザインが多い

この画像の例は神の手上山先生モデルの「プラム 上山式深部用持針器」(189000円也!)

持針器はピンセットに比べると値段が高いので普通の施設に多種多様のものがあるわけでは有りません。
しかし、持針器は仕様が色々あるのでどの状況でどの持針器が良いかを自分の手で確かめて一番良いものを選ぶ必要があります。

持針器の種類

長さ

浅い術野では短い方が、深い術野になると長い方が良いのは当たり前です。
ただし浅い術野は短ければ良いかというとそうでもなく、使う手の人差し指のMP関節から水かきのあたりに自然な感じで器具の後ろあたりが乗る方が安定性が良いと最近感じます。
短すぎてそこらへんに器具の後端がくると引っかかる感じがしたりして安定しません。

シャフト形状

主にストレートとバヨネットタイプがあります。

ストレート型のメリットは指の延長上の感触で操作できるので扱いやすいこと、持つ位置にある程度自由度があるため開頭野から指の距離などを調整して楽な姿勢にしやすいことなどがあげられます。

一方術野が深部で狭い術野になった場合バヨネット型のメリットが出てきます。
縦に深い術野になった場合自分の指が入ってきて視界や光を遮ってしまいます。バヨネットなら軸をずらすことができるので視界を遮るのは器具のみ、となります。ただしバイポーラ型の電気メスほどバヨネットの恩恵は少ないです。(バヨネットの隙間から見るという使い方は無いので)。
また、どうしても形状の特徴上器具のサイズは大きめなので狭い術野での取り回しはストレートに劣る場合もあります。

初心者はまずストレート型でなれることをおすすめします。

先端形状

先端が直のものと湾曲しているものがあり、更に先細になっているものなどもあります。

先端が直のものはマクロの持針器同様の感覚で使え、浅い術野で器具を寝かせて使う場合には便利です。

一方湾曲しているものは針の持つ位置で角度をつけられるので深めの術野に器具を立てて使用する場合に有利です。

浅い術野で行う場合はピンセットで代用が効くので初心者でも湾曲の持針器で良いと思います。

ラチェットの有無


一度握ったらガチッと掴むラチェット仕様。もう一度握るとリリースされます。

ラチェットのメリットは掴んだら離れないので針をふとした拍子に落としてしまうという事故が無いこと、硬めの壁を貫く場合でも負けないこと、そしてロックしてしまえば指を開いた状態でも扱えるので握ったままでは難しいコースで針を通すことができること、といったところでしょうか。

デメリットはとにかく外すのが大変。
特にデリケートな血管壁に針を通したあと先端を動かさずにラチェットリリースする必要がありますが、結構力がいるのでブレてしまいがち。特に器具の長さがギリギリで指が伸び切っているとき。
少しずつ針を進めたり、引き抜いたりするのも苦手です。

糸を結ぶときにも持針器は使えるんですがラチェット付きの持針器はかなりの慣れが必要です。

まとめ

色々な種類があるのでまず自分の施設にある持針器を片っ端から触ってみましょう。
学会で企業ブースなどで展示していたりするので、そういうのを触って自分の手にあうものを探すのも大事です。

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