頭皮クリップの適応
頭皮クリップ(Raney clipとも)に関しては積極的に使用している施設と使用していない施設とがあります。
厳密な適応の基準は無いと思いますが以下のような場合に使用しています。
- 皮膚切開の距離が長い
- 緊急手術などでいちいち頭皮の止血を行う時間が惜しい
- 抗血栓療法などで止血してもじわっと皮弁から出血が滲み出る
逆に頭皮クリップを使いたく無い状況は
- 皮切が短くクリップそのものが邪魔になる
- 線状切開などで皮弁を横にずらす距離が長い場合クリップで皮弁の可動性が制限される
などです。
頭皮クリップの種類
個人的に使用経験があるのは2種類です
このような金属型の複数回使用行うクリップと
このようなプラスチック製の単回使用品です。
金属の方がガッチリ感がありコスト的には良いのですが、何回か使用していると割れることがあり、その際の金属破片の術野迷入などが気になります。
プラスチック製でも止血機能等は問題ないので現在はプラスチック製の単回使用品を使っています。
クリップデザイン
頭皮クリップ用の鉗子に取り付けて皮弁の端に取り付けていきます。
絵面的には端から端までビッシリと並んでいるのがきれいですが、実際はクリップ同士に間が空いていても出血点がカバーされていれば機能します。
ビッシリと並べるとよくある前頭側頭開頭では30個ぐらい必要になってきます。
イラスト画像はCodman社のカタログから。
鉗子の扱いが難しく、握ると先端が開く形になっており、クリップを取り付けて先が少し開くポジションにロック機構がついています。
クリップ取り付けの手順
まず皮膚切開。
切開線の両脇を助手とともに片手4本指で押さえて帽状腱膜下層まで押さえている指幅で切開します。
(右利きの場合)左手で皮膚を押さえたまま外側に少しずらし、動脈性の出血点をバイポーラで凝固します。
動脈性の出血が止まったところで皮膚を鑷子で持ち上げメッツェンバウムなどで鈍的剥離してクリップを差し入れるスペースを作ります。前頭側頭開頭などでは帽状腱膜下のloose connective tissue層にできます。
このプロセスが大事でクリップの片方が奥に進まなければクリップが浮いて頭皮は有効に挟まれないことになります。
ポケットができたらクリップを鉗子につけて、先を開いて(握って)ポケット側にまずクリップを差し入れ一番奥まで進めます。
皮弁側に傾けて創縁ガーゼ(あれば)ごと噛み込むようにロックを外しながらクリップを閉じます(持ち手はロックを外して開く方向)。
そして鉗子をクリップから外します。
コツはクリップの開閉を大きくしすぎず必要な幅+αぐらいでコントロールすると手早く引っかからずに留置できます。
切開した幅おおよそにクリップを留置したらまた皮膚切開を伸ばしていきます。
頭皮クリップの取り外し
ここも慣れるまではもたつくところです。
同じ鉗子を少し握って先を少し開きます。
先にクリップの奥の方の隙間に鉗子の先を差し込みます。
鉗子の先を少し閉じながら鉗子を傾けてクリップの浅い方の隙間にもう片方を差し込み鉗子の先を開いてクリップを取り外します。外したクリップはその場から取り去るか、創縁ガーゼがあるなら完全には外さず、クリップの奥を創縁ガーゼの層にずらして挟んでいきます。
このときの注意点としては
- クリップの奥側に鉗子を差し入れたときに組織を一緒に挟んでしまうとクリップは外れない。
->鉗子とクリップの隙間ギリギリを狙いましょう、逆に創縁ガーゼ側はガーゼを多少噛み込んでもガーゼにクリップを付けていけば良いのでギリギリでなくていいです。 - 鉗子の開閉の幅が大きすぎるために安定しない。
->皮弁幅より少し広く開いて奥からクイックイッと差し込む方が早く安定して入ります。その後の鉗子を傾ける角度も少なくて済むので安定しますしスピードも上がります。
結局最後は慣れ
上記のことを頭に入れながら練習すると数日で上達します。
最初の難関は鉗子の開閉が手の開閉と逆だというところです。
取り付け、取り外しの一連の流れを考えずに手で覚えさせれば簡単になります。
動作としては単純で短いプロセスなので手で覚えやすいです。
余っているクリップや鉗子があれば手術室から借りて自分のデスクの引き出しに入れて暇なときにカチカチやるのも良いでしょう。(実際管理人は初めて頭皮クリップを使ったときに全然使えなくて見かねたOP室の看護師さんが余ったクリップと鉗子をくれました)
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