バイパス練習の意義
脳神経外科の手術のトレーニングは数あれど、頻出なのはバイパス(血管吻合)です。
レジデントにとってはまず開頭などの手順を覚えて、実際に手を動かして開頭をして、というのがハードルになるためマイクロ下での操作というのはどうしてもかなり先のような印象になりますが、実際はバイパスの練習は早めに取り組んだ方が良いです、なぜかというと。
チャンスは急にやって来る
施設にもよるでしょうが、3年目や4年目のうちにマイクロ下での操作を行うのは脳内出血の血腫除去術など緊急手術などでいきなり上級医から「こういう感じにしたらいいから、やってみて」といっていきなりマイクロをパスされる、という状況が多いと思います。
そのときにマイクロ下での術野操作以前にマイクロそのものの操作や調整に戸惑うわけですが、その時間が長ければ長いほどレジデントが実際の手術操作が許される時間が減っていきます。
上級医からしたらチャンスを与えたのに全く手術は進まず、それどころか慣れてなさすぎて危険だ、という評価になってしまいます。
ところがある程度バイパス練習で慣れていれば上記の戸惑い時間が減るため意外と手術操作を進めることができます。やはりそういうレジデントは「筋がいい」(実際には練習してるだけですが)ということで次のチャンスも早くやってくるわけです。
どういう点を意識して練習していくか
マイクロの調整、操作
瞳孔間距離、接眼レンズのピント合わせ
手術用顕微鏡を練習に使っているならズームイン・アウト、ピントの合わせ、鏡筒の位置合わせなど
顕微鏡下での操作を行うベースとなるテクニックです。
これは練習環境がどこまで実際の手術環境に近いかで変わってきます。
卓上顕微鏡の場合は目元での瞳孔間距離、接眼レンズでの左右のピント合わせの練習はできます。
ズームイン・ピント調整などの操作は側面のノブで行うことになるので実際の顕微鏡と違うことになりますが、各操作のどこで倍率を変えるのか、ピントを合わせ直すのかのタイミングを身につけることはできます。
古い手術用顕微鏡などで練習している場合は上記に加えてペダル操作でのズーム、ピント調整の練習ができます。
多くのフットスイッチは真ん中に左足をおいて、つま先と踵でピントやズームを調整する設定になっているはずです。
最初は考えながらになりますが、慣れると自動的に足が動くようになります。
実際の手術で術者交代となった場合は1分以内で自分に合ったセッティングとなるようにしましょう。
術野の作りかた
なるべく術野の真ん中で操作を行うのは当然ですが、見下ろす角度も大事です。
ほぼ真上から、手前からやや斜めに、左右から斜めに、など顕微鏡をふることで見え方が変わってきます。(卓上の場合は血管チューブなどを固定している土台を傾けることになりますが。)
顕微鏡の種類によっては自由度は少ないですが、顕微鏡から術野までの距離も大事です。ついつい近づくことは多いですが、ピントの範囲外になったり、鏡筒に立てた器具が当たるようになってしまいます。
手の入れる方向
術野の1周を考えた場合、片手それぞれ200度ぐらいの自由度で術野に差し入れることができます。
差し入れる方向によってその手先の動く方向、器用さは制限されていきます。
通常は手前30度くらいから外へ90度開くぐらいの進入角度が最もコントロールが効きますが、術野の状態によってはかなり回して入れることが必要になります。
色々な角度にセッティングしてバイパスをしていくと手の進入角度も工夫をする必要が出てきます。
非利き手の動き
マイクロ下の操作の大部分が両手を同時に使用する操作です。
バイパスの場合も針を掴むところから両手の協調が必要なのでそれ含めて非利き手の動きが利き手の操作を上手くサポートしているのかに気を使いながら練習しましょう。
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