バイパス練習講座~その3

ドナーの準備

早速バイパス練習の実際を解説していきましょう。
STA-MCAバイパスを想定している場合はSTA側の準備となります。
端側吻合の「端」側です。

基本概念

この講座で解説する方法は神の手である上山先生や谷川先生(札幌禎心会病院)のやり方を原則としています。
他の記事で別な流儀も解説しますが、個人的にこのやり方を一番多くやっているので解説しやすいです。

ドナー側の概念としては「なるべく断面積を広く、開くようにする」ということです。

  • 断面積を広く
    逆に狭い断面では狭窄病変のように血液の流れが滞り血栓を形成しやすいからです。
    また難しい場所に針を通すときに血管をめくりあげて視野を広く取りやすくなります。
  • 開くように
    これも断面積を広くできる上に血管壁を外反させる方向に力がかかりやすくなるためです。

チューブの固定

まずチューブを術野中央にレシピエントとなるチューブを上下で土台に画鋲や針糸での縫合で固定します。(斜めや横バージョンもあり)

そのチューブにある程度沿うようにドナー側チューブを起き、上側の一点で固定します。
この時あまりにもチューブの間隔が空いていると反対側が厳しくなります。

実際に吻合する位置を想定して、それより少し余裕をもたせ、左右にドナーを倒してもゆとりがあるようにしておきます。

カード型のチューブの場合は隣り合うチューブの片方を切って横からつなげるようにします。

断端カット

ドナーの断端を下面が斜めになるように60度にカットします。

チューブの場合は固めなので生体と違ってチューブを吻合したときに自然と下面が斜面側となる方向で切断することが必要です。

ドナーチューブを掴んで横に90度倒してから切断するイメージです。
チューブを離して断面が下を向いていれば良いです。

更に先程の60度に切ったかかと側に沿って斜面と同じ距離切開を拡げます。

これでいわゆる広めのフィッシュマウス型の断面となります。
断面を拡げて見るとひし形のように見えます。

以下の動画(英語)ではこのドナーやレシピエントの切り方や縫い方が解説されています。

Stay sutureを打っても良い

実際の手術ではレシピエントを遮断する前にドナーの両端にstay sutureをかけるのですが、練習の場合は針糸を節約したいのでかけるとしたら片方です。

実際の手術と違いチューブは固くてドナーが垂直に立ってしまうことも多く、かかと側が非常に縫いにくいのでstay sutureはかかと側から縫うようにしましょう。

ドナーチューブの壁の厚みの2倍の幅で外壁から内壁に通す方向で針糸をかけておきます。

それでは次にレシピエント側の準備です

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