PTAのエビデンスが出ましたよ

頭蓋内血管狭窄に対して

昨今心原性脳塞栓症をメインとした急性期脳梗塞の血栓回収などはもはや脳血管内治療領域ではスタンダードな治療となっています。デバイスも充実し適応拡大のためのエビデンスも集積していっていますが実臨床で困るのはそこからこぼれた者たち。

代表的なものとして症候性頭蓋内狭窄に対しての治療ではないでしょうか。
比較的軽症な脳梗塞で入院となるもMRIを撮影したら頭蓋内の高度狭窄がありMRAで末梢の描出はヒョロヒョロ。

抗血小板薬を投与し輸液を入れながら「悪化したらどうする、PTA?それとも緊急バイパス?」と悩むわけです。
理屈でいくとPTAやステントで順行性の血流を増やす方が手技時間、それまでに入っている抗血小板薬の観点では合理的で簡単なのですがそこで立ちはだかるのがSAMMPRIS Study。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3971471/

日本国内で承認されている唯一の頭蓋内ステント(Wingspan)のstudyですが内科的治療群に対してステント群の方が3倍ぐらい周術期梗塞が多い、という無惨な結果。そのため増悪時にIVRもためらわれるというジレンマがありました。

ステントを要することはそんなにないのでPTA単体で急性期をしのげないのか、と思うわけですがPTA単独のエビデンスは無い。

そんなあなたに2024年9月JAMAに掲載されたエビデンスを。

Balloon Angioplasty vs Medical Management for Intracranial Artery Stenosis
The BASIS Randomized Clinical Trial

AIでの要約


タイトル(英語と日本語)
Balloon Angioplasty vs Medical Management for Intracranial Artery Stenosis: A Randomized Clinical Trial
頭蓋内動脈狭窄に対するバルーン血管形成術と内科的治療の比較:無作為化臨床試験

ジャーナル名と出版年
JAMA, 2024年

要旨
この研究は、症候性頭蓋内動脈狭窄(sICAS)患者において、バルーン血管形成術と積極的な内科的治療を組み合わせた治療法の有効性を評価するために実施された無作為化臨床試験である。結果は、バルーン血管形成術と積極的な内科的治療の組み合わせが、sICASの効果的な治療法である可能性を示唆している。
JAMA NETWORK

背景
頭蓋内動脈狭窄は、脳卒中の主要な原因の一つであり、効果的な治療法の確立が求められている。

方法
sICAS患者を対象に、バルーン血管形成術と積極的な内科的治療を組み合わせた群と、内科的治療のみの群に無作為に割り付け、治療効果を比較した。

結果
バルーン血管形成術と積極的な内科的治療を組み合わせた群は、内科的治療のみの群と比較して、臨床的に有意な改善を示した。

考察
バルーン血管形成術と積極的な内科的治療の組み合わせは、sICAS患者において有望な治療法である可能性がある。

先行研究との新規性
本研究は、バルーン血管形成術と内科的治療の組み合わせがsICASに有効であることを示した初めての無作為化臨床試験である。

限界
サンプルサイズが限られているため、結果の一般化には注意が必要である。

潜在的応用
この治療法は、sICAS患者の新たな治療オプションとして臨床現場での応用が期待される。


なんて大雑把な要約。

501例に対してPTAしたのと内科的治療群で4.4% vs 13.5%のendpoint到達でPTAが3倍近く良いことになっています。SAMMPRISの最終的なendpointは15%なので内科的加療がダメダメなわけでもなさそうです。

PTAでdissectionを作ったらやっぱりステントが必要なのですがそっと優しくPTAをするには心強い報告といえます。

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