意外と当たる橈骨動脈
大腿動脈の次に穿刺に慣れることが多いのが橈骨動脈穿刺です。
施設によっては診断カテーテルは殆ど橈骨動脈というところもあるかもしれません。
かく言う管理人の施設は診断はほぼ全て遠位橈骨動脈、治療もほぼ遠位橈骨動脈か橈骨動脈を目指しているという尖った選択基準でやっています。
血管に対して3次元的(2次元x3方向)で考える、という原則はここでも有効ですが、橈骨動脈には特有の特徴があるのでそのことについて考察します。
橈骨動脈の特徴
- 血管径が細い
- 血管走行位置が浅い
- 血管が逃げる
- スパズムを起こしやすい
血管径が細い
日本人の橈骨動脈はおよそ2.0mmから3.5mm径だが、多くの人は6Frシースぐらいは入るようです。
そう考えると意外と太いことがわかります。しかし大腿動脈に比べれば細いことは確か。
そのため血管内腔を広く捉える工夫が必要です。
つまり血管に対して平行に近い角度で穿刺すると穿刺面からみた血管内腔の断面積は広くなるため穿刺針の内筒・外筒が血管内にいる可能性が高まります。
逆に角度を急峻にするとすぐ血管壁に当たってしまって逆血が無かったり、解離を起こしてしまったりすることになります。
逆血があってもすぐ内筒を抜いてはダメです。
内腔に比べて血管壁の厚みは相対的に厚くなるため十分外筒が血管内腔に入るまで進めてから内筒を抜きましょう。内筒からの逆血が止まるまで刺しても内筒の先端は後壁の途中にいるだけのこともあるので前壁穿刺にこだわりすぎて解離を作ってしまうよりしっかりと外筒を血管内腔に入れましょう。
血管走行位置が浅い
走行位置が浅いことから大腿動脈に比べて触知はしやすいことが多いと思います。
穿刺針を立ててしまうとすぐ血管の位置より深い位置へ行ってしまうためなるべく針は寝かせ気味のほうが良いことがイメージできると思います。
この特徴と、上記の血管に対して平行に近くするという戦略を合わせると、針を立てた時と比べて血管がいる高さを進む距離は比較的長くなります。
上記のことからしっかり刺入部位から近位部側まで触知して血管の走行しているコースを把握することが重要ということがわかります。
血管が逃げる
動脈硬化が強い人などでは特に穿刺した針から逃げるように横にずれてしまってまともに血管内腔へ針が進まない、ということが起こり得ます。橈骨動脈は横方向に可動性があるのです。
大腿動脈でももちろん動脈硬化があり、血管も動くのですが、血管サイズが太いためなんとなく当たってしまうこともあります(ダメなときは血管を保持するつもりで左右からつかんでから穿刺するとよいです)。どちらかと言うと大腿動脈は針が逃げてズレるケースが多いですが橈骨動脈は血管が逃げる事も増えます。
まず針が当たらない時は血管が逃げている可能性に気付くことが第一です。
そして壁が硬くて逃げている感触がある場合は橈骨動脈の外側から正中へ横から支えるように左手で動きを制限してやってから穿刺するとよいです。押さえすぎると血管内腔を押しつぶしてしまうことにも注意。
スパズムを起こしやすい
遠位橈骨動脈程ではないですが橈骨動脈はスパズムを起こしやすいです。
カニュレーション後にスパズムがある場合はニトログリセリンなど動注という手もありますが、そもそもスパズムを起こさないように心がけたいものです。
個人的にこだわっているのは穿刺部位(皮膚から血管まで)を十分カバーするように局所麻酔を効かせて、効果が出るまで時間を待つことです。
穿刺が入らなくて焦っていると局所麻酔をかけてすぐに穿刺したくなりますが麻酔が効くまでに時間が必要です。疼痛があるとスパズムが起こる可能性は跳ね上がるので局所麻酔以後は無痛を心がけるように患者側に少しでも痛みがあれば伝えてもらうようにしましょう。
- 穿刺は寝かせ気味で血管と平行に
- 逆血を確認してからもしっかり針を進める
- 動脈硬化が強い人は血管が逃げることもある
- 局所麻酔を十分に効かせて
↑つい先日改訂2版が出版されたようです。
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