大きな前頭側頭開頭について

大開頭の適応

侵襲性の高めな大開頭を行う場合というのは多くの場合外減圧術を前提としており大体以下の場合に限られています。

  • 重症頭部外傷
  • 重症クモ膜下出血
  • 重症脳内出血
  • 広範囲脳梗塞

大開頭のリスク

ほぼ緊急手術になる大開頭ですが、適応と判断した場合躊躇せずに行うべきです。

そこで抑えておきたいリスクは

  • 出血量の増加(特に開頭を拡げるほど硬膜外からの出血が増える)
  • 静脈洞の損傷(上矢状静脈洞など正中によりすぎると危険)
  • 減圧までの時間が遅延(急ぐ場合は先に穿頭を先行してから開頭へ拡げる方法も)
  • 術後感染症のリスク(外傷などではかなりの高確率)
  • すでにヘルニアなどになっている場合、急な減圧によるangry brain(静脈還流障害によるものだと推測します)

皮切について最近の報告

通常の教科書などでの大開頭は耳介前方からのQuestionマーク型だったり、事前穿頭後の縦皮切からのT字型に皮切を伸ばしての展開が書かれていることが多いです。

しかし耳介前方からの皮切は側頭筋が分厚く、STAの処理問題もでてきます。
T字型は交差点部の創傷治癒に関して不安があります。

そんな折Journal of Neurosurgeryで最近こんな報告がありました。

耳介後方の乳様突起側から切開を行う方式で、個人的にも数年前に先輩医師から教わって以来この方式を優先しています。

結果通常の皮切と比べて感染の合併症率が低いらしいです。(6.3% vs 18.4%)

STAの本幹から離れた皮切になる上、筋肉の切開範囲が少なく、側頭筋をほとんど切らずに開頭できるので開頭スピードも若干早くなる印象。

難点は勢いよく皮弁を剥がしていくと外耳孔へ行ってしまうことでしょうか。

一度お試しあれ。

コメント

  1. 板庇 寛 より:

    先生
    とても興味深い記事の数々、有難うございます。

    私はOpexParkという会社のアドバイザーを務めており、デジタル手術教科書事業の編纂に関わっております板庇(いたびさし)と申します。

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