ゆっくり解説動画はじめました

ゆっくり解説動画とは

以前からもYouTubeに動画は数点アップロードしていましたが近年よく見かける「ゆっくり解説動画」形式での動画を作成しはじめることにしました。

教科書、ブログなど文章だけでは解剖や手順はイメージしにくいため画像、動画の方が有利な気がします。

まずはKeyholeの開頭についての基本を解説してみました。

ゆっくり解説動画というカジュアルな外面をしていますが内容はバリバリ脳外科の術者向けの話になっています。

作成してみての現状の課題としては

  • 動画の尺に収まるように伝えたい内容を取捨選択するのが難しい
  • セリフあたりの字幕の長さ、改行など見やすさ、聞きやすさを考えて文章を組み立てる必要がある
  • ブログと違って一旦作ってしまってからの修正が物によっては難しい
  • 手術の解説は重要局面から逆算して組み立てられているので実行とプランニングが逆方向になる

ここらへんを今後続編を作成していき改善できればと思います

動画の補足的なもの

動画では尺の都合上細かい説明はかなりカットしています。

硬膜内のことを考えて

動画でも触れていますが前頭葉と側頭葉の牽引方向、その距離をイメージすることが大事です。

前頭葉を手前に引くだけであればシルビウス裂を剥離する必要はありません。具体的には視神経から前方、対側に向かって半球間裂にかけてはいわゆるSubfrontal approachでアプローチ可能です。
そういう場合は上側頭線を超えて前頭蓋底側を主に開頭し、脳槽を開放しながら脳ベラで前頭葉を引けば良いわけです。

ICAからACAのA1が見えるような領域を露出していく際はシルビウス裂の剥離を行い前頭葉を斜め前方にめくる感じになっていきます。

更にICAの後ろの分枝やMCA、BAやSCAの方向になるにつれて先程の前頭葉の動きに加えて側頭葉を後方に牽引する必要が出てきます。ここに至ってシルビウス裂を近位から遠位側まで剥離することで前頭葉と側頭葉が離れていきます。

逆にMCAのM1-2の動脈瘤などでは前頭葉と側頭葉を分離しなくても遠位シルビウス裂の隙間からクリッピングできてしまいます。

おそらく若手の先生がクリッピングする時に「しっかりシルビウス裂を剥離しろ」と言われるのは上での前頭葉と側頭葉が離れるほどの剥離範囲にすべし、ということです。(シルビウス裂の剥離については詳細は別項目にします)

話を戻すと特に遠位シルビウス裂を剥離する場合は開頭野に側頭葉、シルビウス裂を含める必要があります。眼窩上アプローチでも外側に開頭を延長したバリエーションはあるので剥離後は似た仕上がりになるのかもしれません。

実際のKeyholeでどのぐらい見えるのかはこのブログでの手術動画や続編、教科書ではAxel Perneczky先生の教科書がcadaverでの写真などあって参考になります。

皮切など

開頭範囲が露出する皮切範囲を考えなければなりません。

動画では直線状の皮切を勧めていますが開頭を伸ばす予定が無いのであればヘアラインによってはカーブさせても問題ありません。
前後に皮弁を牽引した時に予定している開頭範囲が開けば良いのですが、多くの場合はヘアラインや顔面神経の都合上開頭の後方よりの皮膚切開となるので前方に牽引した時にFrontozygomatic suture近くまで露出できるか、にかかっています。
皮膚切開に関しては過去の記事も参考に。

守りたい顔面神経は筋膜より上に存在しているため、皮切をしたあと筋膜上の層で剥離することは顔面神経損傷のリスクを増やすだけだと思われます。最初の皮膚切開線で勝負はついていると思うべきです。

筋層を剥離したあとは予定した開頭範囲がしっかり露出されているかを確認します。
具体的には眼窩外側から頬骨弓のカーブのラインと各縫合線で確認すると良いでしょう。

側頭筋が分厚いせいなのか大体の場合思っているより前頭側よりに開創されていることが多いです。通常の前頭側頭開頭の場合は頬骨弓の前後縁を目安にしてその高さまで皮弁を翻転するようにしましょう。

筋膜下での筋層剥離は上側頭線より切開範囲が下であれば問題ないのですが上側頭線をまたぐ場合は筋層はなくなり骨膜となるためそこから剥離すると筋繊維も一部ちぎれてしまう(上側頭線に筋繊維が付着しているため)ので剥離方向に注意が必要です。

骨切りについて

バーホールをどこに開けるか決まりはないです。
眼窩上アプローチを基礎とするならばいわゆるMacCartyのkeyholeにバーホールを穿ち、そこからクラニオトームを用い小開頭を行うパターンが浮かぶでしょう。

もちろんこれでも良いのですが最近は後方にバーホールをおいてそこからクラニオトームを用いることが多いです。keyholeは眼窩が妨げになって剥離子の挿入が制限されやすいから、というのがその理由です。

骨弁を遊離したあとは骨縁と硬膜を糸で吊り上げて硬膜外からの出血に対して止血、および垂れ込みを防止します。

続きの動画は蝶形骨縁の削除からになります。

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