ゆっくり解説動画 Lt. ICPC動脈瘤クリッピング

ゆっくり動画のボイスキャラクターを変更しました

ゆっくり解説動画第二弾です。

前回の記事でゆっくり解説動画を初投稿しています。
ご視聴いただきありがとうございます。

色々ご意見いただきましたがゆっくり解説動画を見慣れていない視聴者からは声が平板で違和感がある、というものがありました。

前回の動画ではゆっくり解説動画で最もメジャーなものであるゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙というキャラクターとAquesTalkという読み上げソフトを使用しています。
上記に2キャラクターは東方Projectというゲームキャラからの二次創作・三次創作になりますが製作者から自由に使用して良いというお墨付きがあるのでとっつきやすかったですが、音声が棒読み口調になってしまうことは否めません。その代わり大外しもしないのでナレーション系には安定しているかもしれません。

少しでも会話形式に近づけるためAIを用いた読み上げソフトを導入することにしました。
VOICEVOXというフリーのソフトウェアになります。
このソフトには現時点で5人分のキャラクター設定があるため「ずんだもん」と「雨晴はう」をベースに使用させていただくこととしました。

立ち絵のデータは浅井麻 様 (https://twitter.com/asaiasa0)のものをお借りしました。ありがあとうございます。

ご意見いただければまた動画改善に役立てていきます。

動画の補足的なもの

皮切から開頭まで

こんな画像を例示しておりますが、補足事項を。

まず眼窩外側壁から頬骨弓、Front-zygomatic suture、上側頭線をマーキングします。

Squamous sutureをたどり、少し下のPterionと思しきところを確認し、シルビウス裂の推定線を引きます。

STAの前頭枝(上図では薄めの線)を触れながらマーキングします。術前のDSAでSTAのおよその走行は確認済みです。

今回の動脈瘤ではそこまでの脳の牽引は不要と想定して上側頭線より側頭側、側頭葉は目視できるように前後3cm, 上下3.5cmの開頭を想定しました。実際は側頭筋の厚さによって側頭側は予定より少し小さくなってしまうことが多いです。

ヘアラインに沿って頭頂側は後方にカーブさせていますが実際はカーブする手前までの約5cm程度の皮切で済みました。

前回の動画解説であるように皮切で帽状腱膜まで切開したら止血をして、横に剥離をせず同一線上で側頭筋膜を切開します。今回は上側頭線を超えなかったので筋膜のみ切開です。

その後筋膜下層でsphenoid ridgeに向かって側頭筋を横に鈍的に剥離します。

縫合線を確認しPterionを見つけ頬骨弓が触れるまで剥離を拡げ、頭皮フックで牽引します。

Pterionあたりで5mmのドリルでBurr holeを穿ちそこから骨と硬膜の癒着を剥離しクラニオトームカッターで予定通り開頭します。今回は中頭蓋窩側の硬膜表層を損傷してしまいましたが深層は無事でした。

骨縁に小孔を開け糸で吊り上げます。

蝶形骨縁削減について

蝶形骨縁の削減は前頭葉下面からsubfrontal approachを行う時に必要です。裏を返せばdistal sylvian fissureを分けてM1-2を確認するだけであれば上記の開頭後すぐの状態でも問題なく可能でしょう。

Subfrontal approachの時にやりにくさを感じた場合はまず硬膜を翻転したときに手前に出っ張りができていないかチェックすると良いです。

前床突起を外すのは硬膜外からと硬膜内からがあります。
どちらにもメリット・デメリットありますが硬膜というバリアの外から削るか内側から削るかの違いが大きいです。超音波メスで削減する場合はドリルより安全性が高くなっているのでピンポイントに必要な分だけ硬膜内から削るのが周囲の重要構造を把握しながら削れるので良いかもしれません。

動脈瘤の近位確保が難しい場合の戦略としては

  • 遮断なしでネッククリッピングしてしまう
  • 前床突起を削る
  • 頚部の動脈確保
  • カテーテル併用でのバルーン遮断など

が挙げられます。

一番シンプルなのは直接ネッククリッピングですが、サイズが大きく周囲の剥離が不十分な状態で無理にネッククリッピングするとネックが裂ける可能性があるため10mmを超えそうであれば何らかの近位部コントロールの手段を考えましょう。

硬膜内操作について

動画内で説明しているproximal sylvianとdistal sylvianの区別は個人的な見解であって日本や世界共通の認識では無いことに留意下さい。

眼窩上アプローチなどでは開頭野にほとんどdistal sylvianがいないためまず最初にsubfrontal approachを行い内頚動脈や視神経周囲の脳槽を開放し、そこから剥離を拡げていくのが典型的です。

Mini-Pterional approachを始めた時もそういう教科書にならって近位部からアプローチしていたのですが、髄液を抜くとやたら手前のsylvian fissureのくも膜が切開しにくいことに気づきました。

一つは動画でも言っているように手前にくも膜ごとシフトしてしまうこと、そして髄液が抜けてしまうので深く沈んでしまったからでした。

膜を切開する時は膜に沿ってやや斜めに視野を入れるぐらいが切りやすいのですが沈み込んでしまうとほぼ垂直に見ながら切ることになりあまり効率が良くないので最初にdistal sylvianのくも膜を切開する方式にしています。

髄液を早期に抜くことの功罪

動画では必須の様に言ってoptico-carotid triangleから髄液を抜きまくっていますが実はここから抜かなくてもシルビウス裂の表層を切開後、シルビウス裂深層に入りながら適宜髄液を抜いていっても徐々に髄液は抜けていきます。そしてひたすらdistal側から内頚動脈まで剥離するという方法があります。

早期に髄液を抜くことのメリットは

  • 早い段階で脳がslackになり左右に脳をリトラクトしやすい。特に脳ベラを手前内側から外側に開くかけ方ができる
  • スペースが空きやすいので血管などの走行がわかりやすくなっている
  • 髄液に浸かっている状態ではarachnoid trabeculaeが視認しくく拍動によって液面が上下したりしピントが微妙に合わせづらいが、髄液が無いことで視認しやすい

逆にデメリットは

  • 脳の乾燥などによる術中のダメージが危惧される
  • 脳のシフトにともなう架橋静脈などの損傷リスクが上がる
  • 髄液の抜けによる術後気脳症や慢性硬膜下血腫のリスクが上がる

といったことが挙げられます。

剥離のテクニックがあれば髄液を抜かなくても同等の速度、血管損傷リスクで行えるのでしょう。
個人的にはそこまでの腕が無いので髄液を抜くというテクニックを使用しています。

このブログでも以前の記事で今回のような手順をはさみうちとして解説しています。

次回は動脈瘤周囲の立ち回りについてです。

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