開頭からシルビウス裂の剥離の動画
術前検討
今回の動画では術前の画像評価に関して動画内ではあまり解説していなかったのでここで少し情報追加します。
偶然MRIで発見された未破裂脳動脈瘤で画像のモダリティとしてはCTアンギオグラフィーのみでした。
バイパスを伴うようなものや血管内治療の可能性がある場合は基本的に脳血管造影検査を追加で行うのですが、今回はシンプルなクリッピング術が予想され、年齢も比較的若年であることも考慮しクリッピングが第一選択と考えます。
MCAの動脈瘤の場合に術前に調べておくこととしては
- 動脈瘤の位置(どのぐらい頭蓋底から高さがあるか)
- M1が上に凸か下に凸か
- M1の長さが長いのか、短いのか
- 動脈瘤に癒着している分枝があるか
- シルビウス静脈が何本あり底面のどちらで硬膜外へ出ていくか
などが挙げられます。
動脈瘤の位置
意外とMCAでは見過ごされますが、少開頭で行う場合にはM1が長くて更にシルビウス裂の遠位でM1-2となっている場合に開頭範囲外になる可能性があります。
開頭範囲ギリギリならば下からあおるように見てクリップはかけられますがやはり通常開頭に比べて難易度は上がります。
M1について
正面から見て上に凸の場合というのは多くはM1は長めで動脈瘤は下に向きがち、そのため動脈瘤ネックに安全に到達しやすいのは遠位(M2)側からたどって動脈瘤ネック部へ至り、2本のM2の隙間からM1を見ることが合理的です。
逆にM1が下に凸なのはM1が短めでそのまま上向くようにM2が分岐しており、動脈瘤も上を向きがちです。
そのためネックへは近位(M1)側から遠位へたどってネック部に至る方が安全です。
ドームに癒着する分枝
ある程度のサイズになると動脈瘤のドームに対する分枝の癒着は不可避です。
太めで癒着がゆるいものの剥離は楽にできますが、細くて癒着が強いものは剥離が難しくなります。
更にM2そのものがドームと癒着していることもしばしばあり、ここを剥離しておかないとクリップの閉鎖にともなってM2がkinkしてしまうことがあります。
シルビウス静脈に関して
症例によって表層のシルビウス静脈の発達具合にバリエーションがあります。
注目するポイントは何本静脈があり、どこから入ればなるべく前頭葉や側頭葉から合流する静脈を横切らずにすむかという点です。
側頭葉側の表層静脈はやがて中頭蓋窩側深部へ入りspheno-parietal sinusへ抜けていく(もしくは海綿静脈洞に直接流入)。
前頭葉側の表層静脈はどこかで側頭葉側の静脈に合流するか深部の静脈(deep middle cerebral vein)などに流入するケースが多い。
MCA動脈瘤の多くの場合はシルビウス裂を左右に均等に分ければ済むことが多いのでなるべく長い範囲横切らない静脈と静脈の間から入れば良いことになります。
今回のケースのように静脈が1本しかない場合は邪魔になる枝が少ない方から入ります。
静脈が発達していない場合は静脈が邪魔にならないのでラッキーといえますが剥離する隙間を間違えると軟膜下に入ってしまうので要注意です。
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