外来トレーニング?
他国のことは一旦置いておくと、日本での脳神経外科医の果たす役割の一つに外来診療があります。
外来を受診する患者に対して検査・治療を行う、術後のフォローを行うなどなど外来業務は重要な一角ですが日本の脳神経外科の現場では外来診療に特化したトレーニングはほとんど浸透していないと思われます。(私個人も外来そのものを手術のように学んだ覚えはありません)
脳神経外科を志すレジデントは現場の定めでレジデント1年目から、もしくはもうすこし経験を積んでから既存の外来枠を引き継ぎ、自分で調べたり上級医に相談しながら外来診療をOJTとして学んでいると思います。
今回は引き継ぎ外来の際にレジデントが悩みがちなポイントに対して私見を述べていきます。病院によって外来に対して要求するものは微妙に違いますのであくまで一意見として参考になればと思います。
未破裂脳動脈瘤
脳ドックやめまいなどのMRIで偶然見つかった未破裂脳動脈瘤。治療適応と考えられるものは既に治療されていますが経過観察を選択された場合、脳ドックのガイドラインに従うと半年以内のフォローMRIを撮影し、著変無ければ年一回のフォローとなっていることが多いと思います。そのまま変わらず5年程度経過してあなたの初外来にやってきたなんてケースも多いです。以下に考えるポイントを
ほんとに著変無し?
何年もフォローしていると1年のスパンでは著変無しとなっていても少しずつ変わっていて初診のMRIと比べると明らかに形や大きさが変わっていることがあります。
それってIFDでは、、、
ICPCの動脈瘤疑いと最初言われていたがフォローのMRIで見ると膨隆の先からPcom A.が出ている場合も漫然とフォローしている事があります。CTAやDSAで確認取るのも良し。他に病変がない人の破裂しないと言われているinfundibular wideningを長年フォローするのは気が引ける。
どうなったら次のステップに進むか
一番大事なポイントとしては今見ている動脈瘤がどうなったら治療を前提とした精査などをするつもりなのかを患者側と決めておく事です。
意外と少しずつ大きくなっていても経過観察を選択してMRIを毎年撮ってるから大丈夫、と誤解している患者は多いです。
一応未破裂脳動脈瘤の年間破裂率はUCAS JAPANなどで数字として出るわけですが増大そのものが破裂リスクであるため話は単純ではありません。
参考のため下記にUCAS JAPANの動脈瘤の部位、サイズでの年間破裂率の表を示します。
年齢等で当初経過観察を選択した場合でも例えば5mmを超えたら治療、7mmを超えたら治療、という感じにどこかで線引きをしなければ結局破裂するまで治療せずとなり得ます。その場合MRIは毎年検査するたびに破裂するかもと脅されるけど何もしない無益な検査となります。
原則として動脈瘤治療は予防なので治療をしない選択肢は尊重すべきですし、年齢等考慮しなければなりません。その上で破裂するまで治療しなさそうな場合はいっそフォローを終了を提案することもしばしばあります。
絶対的な正解は無い~基本は予防的治療であることに注意
これだけ述べましたが無症候性の未破裂脳動脈瘤は未来の破裂→くも膜下出血、それに対する予防治療という不確定性が強い分野です。それだけに絶対的正解は無く、患者の納得があるかが問題となります。
上記は難しい話ですが患者側に理解してもらう必要があります。治療もリスクがあり、経過観察も破裂リスクがあることを認識した上で選択してもらうべきです。一年前の外来担当医の説明をしっかり理解しているか確認することも大事です。
コメント