頚動脈狭窄の加療について~症候性頚動脈狭窄

頚動脈狭窄症は多い

脳外科の外来では人間ドック・内科のスクリーニング、脳梗塞で発症した症例など頚動脈狭窄の患者を診る機会は非常に多い。院内に脳卒中系の脳神経内科が無ければなおさら頚動脈に何かあれば全て脳外科に回ってくると思って良いでしょう。

レジデントが外来で初診であたることも多い。今回の記事はその時におさえておくべきポイントと考え方の一例を提示します。

症候性か無症候性か

頚動脈狭窄に関しては虚血性疾患を起こした(ている)症候性のものか、まだ何も悪さをしていない無症候性かで大きく話が変わってきます。

それって 血栓?血行力学的?

まず症候性頚動脈狭窄は脳梗塞症状もしくは一過性脳虚血発作を起こした前科がある病変を言います。
分かりやすいのは脳梗塞を起こした患者に心原性脳塞栓症などのリスクが無く頚動脈に50%以上の狭窄があればTOAST分類からアテローム血栓性脳梗塞に分類されます。

この時点でざっくりと症候性の頚動脈狭窄と考えてよいわけですが脳外科医ならもう少し詳しく考えてみましょう。

狭窄 (or 閉塞) 時に脳梗塞が起こる機序としては血栓(Artery-to-artery embolism)ものと血行力学的ストレス(Hemodynamic stress)もしくはその混合に大別されます。

上左の模式図のように血栓によるものは狭窄病変によって血流が渦巻くことなどにより血栓が形成され、遠位に流れることで頭蓋内の血管を閉塞させ脳梗塞となる病態です。頚動脈狭窄からの脳梗塞の多くはこのパターンです。

一方血行力学的なものは一定以上の狭窄率となり、狭窄遠位での圧が低下することで血流量自体が低下する病態です。頚動脈の場合は高度狭窄に加えて頭蓋内血流が側副血行路の発達で代償しきれない、という条件が加わって脳梗塞に至るので血栓によるものより頻度は下がります。

内科的治療

急性期 (一般に発症2週間以内) ならばまずは抗血小板剤やスタチンなどの内科的加療がまずは第一選択となります。抗血小板剤の2剤併用も良い選択です、特に後ほどステント留置術を予定する場合は約2週間程度は2剤併用を術前に続けておきたいところです。

しかし上記の内科的治療を主に血栓性の脳梗塞の再発防止を念頭に置いていることに注意が必要です。

血行力学的な理由で脳梗塞を起こしている場合は血圧の維持や脱水の補正、血液希釈などが有効と考えられますが、血栓性のものに比べて著効する印象はなく経過中に進行してしまうこともしばしば経験します。なので血行力学的な脳梗塞を疑う場合は進行性脳梗塞 (Progressive stroke) となる可能性を考えどのタイミングで外科的加療に踏み切るかを初診時に想定しておく必要があります。

外科的治療

NASCET法で50%以上の症候性頚動脈狭窄症に対してはガイドラインでも熟達した術者・施設であれば再発防止目的の頸動脈内膜剥離術 (CEA) の対象となり得ます。同様に頚動脈ステント留置術 (CAS)も対象と考えてよいです。

https://kerbyradres.github.io/NASCET/ より引用

更に最近のエビデンスではCEAに関しては発症早期 (2週間以内) にCEAをした方が効果が高いという報告もあったります。

CEAのハイリスク群に関してはCASも良い適応となりますし、ハイリスクでなくても正直治療リスクは大差無いと思っています。ただし高齢者に関してはCASよりはCEAの方が良い、というエビデンスがあります。

エビデンスの世界ではCEAの合併症率は低すぎるのでCASがCEAより合併症率の面で上回ることは無さそうですが、正直熟達すれば一部の症例以外の成績は大差無いと思います (その一部の症例かどうかは熟達していれば術前にわかる) ——-

上のくどくど書いてある項目は専門医受験前以外はひとまず無視してOKだと思います。
レジデントならば外科的治療の対象と考えた時点で指導医に相談しましょう。

血栓性ののものは2週間粘れることは多いので抗血小板剤2剤併用->CASの流れがスムーズとなります。

血行力学的なもののうち進行性のものはCEAが良い適応だが間に合うかどうか、過還流症候群の問題などがある。

  • 頚動脈狭窄からの脳梗塞は2つのメカニズムがある
  • 血行力学的ストレスによるものは要注意!
  • 中等度以上の症候性狭窄は外科的治療を考慮
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