開頭クリッピング術は剥離が大事
開頭クリッピング術は破裂、未破裂脳動脈瘤に対する有効な破裂予防手術です。特に未破裂脳動脈瘤の場合はなるべく脳構造を破壊せずに目標となる動脈瘤へ到達しなければならないことが特徴である。
他の臓器と違い臓器の授動というものが制約されるので術野の展開には工夫が必要となります。
髄液を抜くべし
髄液を抜くと脳は縮む!
コレがまず第一原則となります。髄液を抜くには手術前ならスパイナルドレナージや高浸透圧利尿剤の投与などの手があります。
術野では脳槽の開放によって脳槽内の髄液が抜けます。
ただしいきなり髄液を抜きすぎると術野全体が沈んでやりにくくなるという罠もあるので最近は以下に書いた両面からの展開を重視しています。
両面作戦
例えば前頭側頭開頭でのアプローチであれば、開頭後にまず表面のシルビウス裂のくも膜表層を遠位から頭蓋底側の下に落ち込んでいくところまで切開します。ここで他の構造物と癒着がありややこしいところがあれば後回しにします。
次に早々と前頭葉下面から脳ベラは使わず、吸引管で優しくピンポイントに展開して視神経を探します。
くも膜から透けて見える視神経を確認したらそこからくも膜切開を置き視神経の周囲、視交叉の前の脳槽を開放します。
徐々に髄液が抜け脳が沈んでくるのでそのまま外側の視神経と内頚動脈周囲の脳槽を開放します。このプロセスで近位部確保できたことになります。
遠位アプローチと近位アプローチを併用
動脈瘤のドームがどちらに向いているかなどでそのまま近位部から剥離を進める近位アプローチを基本とするか、最初の方向に戻って遠位から左右に開く遠位アプローチを中心にするかを選択します。
原則としてドームの向いてない方からアプローチして近位部、動脈瘤ネックを確保する事が大事です。例えばMCAのM1-2動脈瘤ならば下向きドームは遠位から、上向きドームは近位側から、というイメージです。その他にもM1の長さで剥離必要距離は変わるのでshort M1は近位側有利、long M1では遠位側有利となりやすいです。
大事なことは片方で行き詰まった時はもう一方からアプローチをすると意外とすんなり展開が進むことがある、ということです。
遠位アプローチ
比較的イメージしやすく多くの人の経シルビウス裂アプローチといえばこちらかもしれません。
シルビウスの表層遠位から一旦MCAのM2レベルまで深掘りしてそこから左右にテンションをかけて頭蓋底側へ向かって切り上げていくペーパーナイフ法が効果的です。
ペーパーナイフ法は脳を左右に引ける事が前提ですが上述の髄液を脳槽から抜いた段階で大体脳は可動性をもっている事がほとんどです。
ドームが下向きなら遠位から両側M2の間の奥でM1が確保できます。
近位アプローチ
近位アプローチの場合は左右というより前頭葉を斜め手前に引きつつ側頭葉との間のくも膜を奥から手前方向に切開し剥離する方法です。
遠位アプローチほど脳葉間が空いていないことと奥から手前方向というハサミが切りにくい方向に進めていくことになるので遠位アプローチに比べて慣れが必要です。
内頚動脈から前大脳動脈、中大脳動脈と太い血管伝いに剥離が進められるので血管周囲の脳槽を利用しやすく鈍的剥離もしやすいことを利用しましょう。
髄液を抜いて脳をslackに
表層のくも膜は脳が沈む前に切開しておく
遠位と近位両方を併用しながら無理なく剥離を進めよう
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