IVRの基礎〜大腿動脈穿刺〜

診断カテーテルでも血管内治療でもまずカテーテルを血管内に入れなければはじまらない、ということで動脈の穿刺、カニュレーションについて。

まず当たらない

研修医の多くがまずつまずくのが、まず血管に針が当たらない問題である。

教科書では鼠径靭帯から2cm遠位だとか大腿骨頭中央だとか、30度だとか45度とか書いてあるけれど言われた通りにしても当たらない。拍動は触れるのに当たらない、そうこうしているうちに患者が痛がりだして、上級医に交代。そんな経験は無いだろうか。

色々な流派あれど穿刺に関しては手技の型も大事だが「見えないところに対するイメージ力」が上達に大きく関与しているように思う。

皮膚を貫いた穿刺針の先端がどう進んでいるのか、内筒と外筒の位置関係はどうかなどは直接見えない、しかも皮膚から血管の距離、走行角度、血管壁の硬さなどは本来患者一人一人違うのでこのやり方で百発百中、という方が土台無理である。

当たらない時はやり方がいけない、など考えても仕方なくて、今しがた針は血管に対してどうズレたから当たっていないのかを考えてその患者に合わせた軌道修正が必要なのです。

しかし漠然とイメージ、と言っても助けにならないので考えるヒントを。

平面x3で考える

実は人間は直感的に3次元を把握することはそこまで得意では無い。直感的な3次元の表現方法が無いのがその証拠で、3次元的な位置を伝えるには座標や経緯度といった方法か、2次元プラスもう一次元という形を取らねばならない(右上の奥、など)

なのでイメージも割り切って血管を三方向から見て、針の進行方向との関係を考えると整理しやすい。

上から見下ろすビューだと前後左右の平面、横から見たイメージならば前後と深さの平面。輪切り断面のビューだと左右と深さの平面。

上から見下ろす俯瞰ビューを考えた場合刺し始めの位置から進んで血管に到達する経路は以下のようになり、血管の走行の方向と針の刺入方向がズレるほど血管に当たりうるゾーンは減少するのがわかる。

横からのビューでは皮下の厚さによって刺入開始点と血管到達地点が変わることがわかる。更に手による皮膚の圧迫によるズレも考えなければならない。

刺入角度を立てすぎると血管に当たりやすいがその後のワイヤー挿入時に角度が折れすぎて挿入しにくかったり分枝へ迷入しやすくなる、しかし浅すぎると針が上滑りするだけとなる。

断面では左右のズレによって血管内腔への当たりやすさが変わることがイメージできる。圧迫での血管の変形もイメージしよう。斜めにズレると針が滑って逃げる事も良くある。

血管に対しての位置を三方向から捉える

↑つい先日改訂2版が出版されたようです。

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